土砂災害に遭いにくい斜面地とは

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災害は他人事ではない!

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皆さんは災害と住まいについて考えたことはありますか?このサイトでは、私の住まい探しや災害ボランティアの経験を通して考えた、災害被害に遭わないための住まいの選び方や、災害に遭ってしまった時の生活についてまとめました。皆さんのお役に立てれば幸いです。

斜面地にあっても被害を受けにくい地域とは

斜面地にあっても被害を受けにくい地域とは

土砂災害の被害を受けないためのポイント

広島市の土砂災害では斜面地にありながら、被害を受けなかったところもありました。そのような地域には4つの特徴があると私は感じました。
1つ目は斜面を流れる小川や谷から遠いことです。大雨などで崩壊した土砂は低い所へ流れるので、斜面地の中でも標高が低い小川や谷に土砂が集中します。その土砂が斜面地を加速しながら下って、傾斜が緩やかになる住宅地で広がります。つまり、小川や谷に近いと土砂災害の被害を受けやすくなります。実際に自治体がホームページで公開しているハザードマップでも、小川や谷に近い地域が土砂災害に巻き込まれる危険性が高いエリアに指定されています。近くに小川や谷があるかどうかを確認するには住宅地の地形を理解する必要がありますので、市販の地図だけでなく市役所のハザードマップや国土地理院が公開している地形図をチェックする必要があります。
2つ目は住宅地を流れる小川や谷の上流に砂防ダムがあることです。砂防ダムといえば大きな川の山奥にあるイメージが強いですが、小さな川や谷にも設置することができます。砂防ダムは川や谷の途中に巨大な壁を立てて、土砂崩れで流れてきた土砂を食い止めます。破壊力が大きい土砂は下流に流れないので、土砂崩れが起きても被害を防ぐことができます。実際に被害を受けなかった住宅地では谷の上流に砂防ダムがあり、そこには大量の土砂がたまっていました。しかし、砂防ダムを建設するには多額の費用がかかり、多くの小川や谷には砂防ダムが建設できていないのが現状です。被害を受けた地域でも砂防ダムを建設する予定でしたが、費用などの理由で建設が遅れていました。砂防ダムの有無はインターネットでは調べるのが難しいので、市役所の土木課などに確認してもらうことが確実だと思います。
3つ目は最近になって開発された住宅地です。被害を受けた住宅地は1970年代に開発されたものが多いです。坂道の勾配がかなり急で、住宅地と山林の間には土砂を食い止めるものは何もありませんでした。一方で、被災地から3kmほど離れた新興住宅地(1990年代に開発)では坂道がそれほど急ではなく、住宅地と山林の間にはフェンスが設置されたり、法面がコンクリートで固められたりしていました。年々、山林を切り開いて造成された住宅地では土砂災害を防ぐ施策が行われていると感じました。
4つ目はすぐ山側に鉄筋コンクリート製の高い建物があるところです。斜面地の中腹に約10階建てのマンションが建っていました。1階部分には土砂が流れ込んだ痕跡が鮮明に残っていました。しかし、マンションのすぐ下に位置する一戸建てには土砂の痕跡は見当たりませんでした。マンションが土砂をほとんど受け止めて、一戸建てには土砂が流れこまなかったものと考えられます。高い建物が1棟しかない場合はその建物がない方向から土砂に流れ込む可能性は高いですし、複数あっても建物の間から土砂が漏れるので被害が完全になくなるわけではありません。しかし、家が流されるような甚大な被害は避けられる意味では効果はあると思います。

まとめ

この4つの特徴を考慮すると、1階から3階の部分が住戸ではなく砂防ダムのような構造になっている鉄筋コンクリート製の高層マンションを4~5棟ぐらい建設すれば、コストをあまりかけずに土砂災害の被害を抑えられるのではないかと考えました。しかし、斜面地の住宅地は第1種低層住居専用地域に指定されているところが多く、高層のマンションを建設することは難しいです。また、核家族化やライフスタイルの変化で駅から近い住まいが人気になっている中で、駅から遠い高台の住宅地に新たにマンションを建てて、部屋を埋めることができるのかも疑問です。この方法を実現しようとするならば、自治体が公営住宅の形で建設して安く提供するしかありません。